寒さに耐用す生物学的法則として「ベルグソンの則」と「アレンの法則」がある。
ベルグソンの法則は、寒冷地になるほど動物のカラダは大きくなり、球に近づく進化を説いている。これは、カラダが大きく、球形のほうが体表面からの熱の放散が少ないからである。
また、アレンの法則は、寒い地方の動物ほどカラダ表面の付属物や突出部が後退するというものである。たとえばベルグソンの法則で考えてみると、確かに北欧のスウェーデンやノルウェーの人のほうが、南欧のイタリアやスペイン人より太っているように思える。
また、アレンの法則では、寒い地方のイヌイットの鼻が低く、顔は平面的で手足も短くずんぐりしているのが納得できるし、インド人の鼻が高く、背が高く細身なのもうなずけるというもの。
人の寒さへの適応についての有名な研究がある。それはオーストラリア原住民のアボリジニ、アフリカのカラハリ砂漠のブッシュマン、フィンランドのラップ人、カナダのイヌイットなどいわゆる極地」万の土着民族を対象にして嗣へた実験である。実験では、氷点下の環境で裸で薄い寝袋に入ってもらい、夜8時から朝4時までの8時間にわたって、酸素消費量、直腸温、皮膚温、筋肉の震えが起こるかどうか、よく眠れたかなどを調べた。
この結果、寒冷地に住む民族では足の皮膚温が下がり、直腸温も下がっているにもかかわらず、朝方までふるえが起きず、よく眠ることができた。一方、対照とした寒冷地に住んでいない民族では、一応睡眠はとれたが、皮膚温は意外と下がらず、熱の放出量が多いため睡眠中に零えを認め、酸素消費量も増加していた。
以上から、寒冷地に強い体質のある民族はちょうど熊が冬眠するように低代謝で効率のよい睡眠をしていたことがわかる。それだけに寒さに鈍感であるため、冷え症にもなりにくいと考えることができる。