「バリアフリー」は、建物に段差をなくし、手すりや取っ手をつけることで、住みやすくしようという考え方です。障がいをお持ちの方にとっては、もちろん画期的なことです。しかし、健常者が通常暮らす上で、そこまで便利である必要はないと思います。
「快適さ」という言葉は蜜のように甘いのですが、時として害でもあります。まだ体が動くうちは段差があれば段差を越えるように努力しますし、脳は、「あそこに段差があるな」と思いながら行動するからです。バリアフリー環境だと自分の体を甘やかすことになるわけです。
少し頑張れば動けるのに、その部位を動かさずにすんでしまうため、そのうち本当にその部位が動かなくなってしまいます。これでは、快適さを追求したばかりに、危機を察知する能力が低下してしまいます。
また、我々は快適さを求め続けて、室内の温度を一定に保つという空調設備も手に入れました。しかし、空調設備によって体温調節が不能になるのですから、これも快適さがもたらした弊害と言えます。冷房完備で、空気の温度が一定に設定されている空間に長時間いる人たちは、自分で温度調節をする必要がありません。常に室温が体温に合わせてくれることに慣れてしまって、外へ出たときに自分で体温調節をすることができなくなってしまうのです。最近の若い人たちが汗をほとんどかかないのも快適すぎる環境が体の機能を麻痺させてしまっているのです。
住環境は、かえって自律神経の働きを鈍化させることになるのです。