ジスルフィラムという薬は、アルコールを分解する作用がストップするため、ちょっと飲んだだけでもすぐに気分が悪くなってしまいます。もちろんアルコール中毒症の患者の治療にも使われているものです。この薬を飲んだ元アル中患者は、こんなふうに体験を語っています。
それまで飲んじゃいけないっていわれていた酒を、ドクターがそろそろ少しなら飲んでもいいっていうんですよ。おかしいなとは思いつつ、酒を見たらもうダメ。数週間ぶりのビールをきゅうっとあおりました。これまでだったらジョッキに3~4杯飲んで、やっとほろ酔いなのに、コップ1杯でやたら酔っちゃいましてね。
しかも、気持ちは悪くなるわ、心臓はドキドキするわ、あんなに酔ったのほ生まれてほじめてですよ。しばらく飲まないとこんなに酔っ払うものなのかとびっくりしましたね。それからは、何度飲んでもコップ1杯でさんざんな思いをしています。さすがに飲みたいという気もなくなっていきました」
ところがアル中というのは、ようやくの思いで断酒しても、何年か後、ちょっとだけならと飲みはじめ、あっというまにあと戻りのパターンが多い。懲りない面々なのです。この体験者の場合は、さいわい強い精神力で酒と別れることができました。しかし、ふたたび酒に手を出す可能性のある人ほ、家族などがこのジスルフィラムをさりげなく飲ませることが必要です。
たとえば、何か仕事でおもしろくないことがあったり、ふさぎこみだしたりしたときに、そっとみそ汁に入れておいたりします。勿論、専門医の指導のもとにおこなわなければいけません。