世の中には変わった趣味噂好があり、病院に入院するのが大好きという人もいます。「先生、このところずっと胃の調子がおかしくてしょうがないんです。入院して治療していただくとたすかるんですが」
こんなとき、入院施設はないと答えるとガツクリしてした表情を見せます。もっとも、こういうことを言い出す患者さんは、たいがい軽症です。
だが、病気なら何でも入院すれば早く治ると考えるのは間違いです。それに病院というところは決していごこち居心地のいいところではありません。殺風景だし、楽しみも少ないのが普通ですし、週刊誌で順天堂大の白壁教授が次のように語っています。
「病室とホテルと刑務所ほ同じようなつくりだと思いませんか。24時間、拘禁状態のようなもの」
さらに、潰瘍などでは入院の必要はほとんどなく、外来で充分だとも言っています。確かにそういう面もあるでしょう。自分の家がいちばん暮らしやすいし、居心地がいいはずです。
ところが、最近は、嫁姑の問題や、家庭内不和が原因で、自分の家が住みやすいとはいちがいに言いにくい時代になってしまったのです。
ここに問題がある。かくして、病気の治りも居心地もよくないのに、「入院願望」などもってしまうふしぎな患者があらわれるのです。