「先生、昔、使っていた赤チン、あれほいったいどこへ行ってしまったんでしょうね」何だか、10年前にほやった映画の宣伝コピーみたいな質問です。
「別にどこにも行ってませんよ。ちゃんと街の薬局で売ってますよ」そう答えると、たいていの人は意外そうな顔をします。
別に、赤チソの販売が禁じられてしまったわけではありません。一時期、水銀公害がずいぶん騒がれました。赤チンも、有機水銀化合物を水に溶かしてつくられます。
このため、いろんなところから危険でほないのかとクレームがつき、日本の製業会社はすべて製造をストップしてしまいました。
しかし、決して国から正式に禁止されたわけではありません。そもそも、パッカリあいた傷口に、赤チンを1瓶も2瓶もまるごとぶっかけるのでなければ、わずかの水銀をさらに50倍に薄めたものをわずかつけるくらいでは、それほど影響はないでしょう。
そこで、ある会社が中国から赤チソの原料を輸入し、小瓶につめて販売しているのです。昔ながらの赤チンファンがけっこう買っていくそうです。
赤チンの消毒力はなかなかのものです。オキシドールよりも強いくらいです。ただ、赤チンにはそれを塗ってしまうと、膿んだりしたときの変化が見分けにくいという欠点があります。それが原因で使わなくなった人も多数います。
最近はかなりの田舎に行っても道路ほアスファルト舗装され、土にいる破傷風菌や色々な雑菌と接触する機会も少なくなりました。
かつては、この病気で命を落とす人も多かったのです。だが、赤チンがそうした雑菌感染から人々の命を守った例も数え切れないほどあるのです。今はひっそり隠れているかつての人気家庭薬です。