抗がん剤は免疫細胞まで殺してしまい、逆効果だというのがデメリットです。しかし、抗ガン剤を投与しなければ命が助からないケースも多々あります。
実は、抗がん剤には、もうひとつ大きな問題があります。それは、抗がん剤では、がんの親玉を退治することはできない、ということがわかってきたことです。
最近のがんの研究で「がん幹細胞」の存在が明らかになっています。「がん幹柵胞」は、がん細胞を生み出し、腫瘍を作る親玉的な存在です。しかし、やくざの親分と同様、ほとんど動きません。自らは増殖しないのです。前述の殺細胞剤は、増殖の盛んな細胞に襲い掛かりますから、ほとんど増殖をしない「がん幹細胞」を殺すことはできません。
「がん幹細胞」は木にたとえると幹の部分にあたります。枝葉にあたるがん細胞を抗がん剤でいくら叩いても、「がん幹細胞」が残っていれば、転移・再発につながります。
ですから、画像検査でがんが消失したのを確認し「完治した」と喜んだのもつかの間、あっという間に転移・再発し、前よりひどくなり、亡くなってしまうことがあるのです。にもかかわらず、多くのがん拠点病院では、いまだに殺細胞剤が抗がん剤の主流になっています。
欧米では抗がん剤より分子標的薬が主流
欧米では、すでに殺細胞剤の使用頻度は極めて低く、もっぱら分子標的薬が使用されています。分子標的薬とは、がん細胞の表面にあるたんばく質や遺伝子を識別して、攻撃する薬です。
この分子標的薬が開発された経緯はこうです。
1980年代前半に、メガファーマ(世界の上位10位に入る製薬会社)の首脳が民間保険会社の首脳に呼び出されました。そして、民間保険会社の首脳はこう脅したのです。
「お前たちの体たらくでがんの治療費がうなぎ登りだ。死亡率も変わらない。このままなら治療費は支払わない」青くなった製薬会社の首脳たちは、いままでとまったく作用の仕組みが異なる抗がん剤の開発に着手したのです。
その結果、誕生したのが分子標的薬です。なんと皮肉な話でしょうか。いままでの抗がん剤は、前述のようにがん細胞と一緒に免疫細胞も殺してしまいます。しかし、分子標的薬は、免疫細胞は殺しません。それが大きな特徴です。
現在開発中か新たに承認された抗がん剤は、すべて分子標的薬であり、殺細胞剤はひとつもありません。分子標的薬は、すべて免疫力を上げるか温存する作用を持つ薬です。21世紀のがん治療は、免疫を重視した治療なのです。
詐欺的な免疫療法が蔓延していますが、ごく一部に効果のある免疫療法もあります。しかし、がんの専門医は効果のある免疫療法さえ否定しています。患者の「生きたい」という希望を無視して、時代遅れのがん治療にしがみついているとしか思えません。