「がんと診断されたら放置しなさい」という話を耳にしたことがあるのではないでしょうか。これはある医師が主張する意見です。しかし、本当にそうなのでしょうか。
実際、手術をしたくないといって放置した結果、胃がんが進行してしまった方もいます。ガンを放置してよくなるのであれば痛い手術も受けなくてすむのですから本当に治るのであれば言うことがありません。
いま、このような誤った考えに取り憑かれた患者が日本中に相当数いるのではないかと思います。これを提唱している医師は自身の患者、170名で自分の意見が正しいことを確認しているといいますが、たったそれだけの人数であれだけ堂々といい切ることができるものでしょうか? 彼の放置療法のために、陰で泣いている患者数は170名どころではないはずです。
唯一の免疫療法
この医師は免疫療法と呼ばれる治療法は医学的に効果が証明されていない、ということ言っています。しかし、本当に効く免疫療法もある」といっています。ただ、「強烈な免疫刺激があるから危険」だとしています。
これは何のことかといえば、前述の米国NIH の「LAK療法」のことです。「LAK療法」は、前述のようにNK細胞を使った免疫療法です。「LAK療法」では患者から採取したNK細胞を3日間だけ培養し、活性化させた後に大量のIL-2(サイトカイン=免疫刺激物質)とともに体内に戻します。すると、元気なNK細胞が、がん細胞を攻撃して消滅させます。
ところが、IL-2 を大量に投与すると、免疫刺激効果とともに強い副作用もあり、これが危険なのです。「LAK療法」の実験では、IL-2投与による肺水腫(肺に水がたまる)によって数名の患者が亡くなっています。
米国NIH では、3日以上NK細胞を培養すると、NK細胞が自滅してしまうため、短時間のリンパ球採取とIL-2 を併用して、ICUで管理したのです。
結局「LAK療法」はNK細胞の培養が難しかったため、米国NIHもそれ以上の研究を行いませんでしたが、その効果はこの医師も認めているわけです。つまり、「免疫療法は医学的に効果が証明されていない」というのは間違いで、海外にはエビデンス(科学的根拠)が存在するのです。
国が認めている免疫療法があるのも事実です。