消化器内科医のほとんどが口を揃えるのは、早期慢性膵炎診断はとても難しいということです。
- 著明な膵外分泌機能低下
- T で膵石を認める
- ERCPまたはMRCP( いずれも膵管画像診断)で膵管の著明な拡張もしくは念珠状変化がある
このうちひとつ以上が認められた場合に早期慢性膵炎と診断することになっています。早期慢性膵炎は、飲酒歴がある男性に圧倒的に多く見られますが、飲酒歴のない女性でも見られることがあります。
意外にも飲酒歴のない若い女性にも多いのです。早期慢性膵炎の原因として、男性はアルコールと脂肪の摂りすぎが75 % で、女性の場合は50% が原因不明です。
女性の原因不明の中に感染性の膵炎がいると考えています。早期慢性膵炎と診断された方の膵臓の検査を行ったことがあります。腹腔鏡を使って組織を取る生検を行いました。電子顕微鏡で検査をすると、サイトメガロウィルスというウイルスが見つかりました。
感染性膵炎はあり得ると考えていました。ですから、若い女性でも膵炎があると考え、原因不明の持続的腹痛を訴える女性には、腹部超音波検査で膵管拡張が見つかれば、早期慢性膵炎と診断し治療して感謝されています。
日本膵臓学会の診断基準に該当する慢性膵炎は一生治りません。多くの臨床例でそれを知っているからこそ、早期診断で早く治してあげたいと努力しています。
腹部超音波検査で膵管拡張があるかどうか確認するには技術が必要です。腹部超音波専門の検査技師でも、私が認めた膵管拡張を見つけることができなかったくらいです。
そもそも消化器内科医で腹部の診察をしない医者が多いのです。現代医学は検査機器が発達したため、なにかとCT やMRIなどの検査機器に頼ろうとします。
しかし、膵管の拡張は腹部超音波検査でないとわかりません。これは大病院の医者も同様です。ひどい場合は、心療内科を受診しなさいといわれ、受診したものの一向に改善しないのでネットで検索する日々を送る人も多いのです。