最近の若い医者はデジタル診断に頼りすぎる傾向です。しかも、診察するときに患者の顔や表情さえ見ません。ずっとパソコン画面だけを見て診断を下します。
たとえば、消化器内科の場合、腹部を手で触って診察するのが基本です。それを実践する医者は激減しています。そればかりか、大病院になると、検査自体も自分で行いません。検査部門にオーダーを出して、その結果だけを見て診断するのです。
人間がデジタルな生き物であれば、それでも十分かもしれません。しかし、人間はアナログです。デジタル機器のように1 か0だけでは、体内の微妙な変化など捉えきれるものではありません。
昔の名医は、患者の顔を見ただけでどこが悪いか診断したといいます。循環器内科の医者で「100万ドルの耳を持つ」といわれる名医がいました。聴診器ひとつで心臓病をすべて診断するのです。そこまでできなくても、私は未病を発見し、治すことが医者の使命なのです。
未病とは、病気が進行していない状態で、早期の病変のことをいいます。がんでも、早期発見すれば助かる確率は95% 以上になります。
発見が遅いと、進行がんとなり、生存率は良くても80% 、悪いと5% 以下になります。そうなれば、本人が亡くなるだけでなく、莫大な治療費がかかります。がんに限らず、他の病気でも同様です。未病のうちに治せば、医療費もかからず、本人は幸福な人生を送ることができます。これこそ医療費の削減につながる、理想的な方法です。