人間は発汗によって無意識に体温調節を行っています。定温動物である人間は、熱帯地だろうが極寒地だろうが、常に一定の体温を保とうとします。
体温が上昇すると、汗を出し、その蒸発熱によって体温が奪われる仕組みになっています。これは自律神経の働きによるものです。
体温調節のための発汗は「温熱性発汗」と呼ばれます。しかし、人間は精神的、感覚的な刺激に対応しても発汗することもあります。これは「精神的発汗」と呼ばれます。
いわゆる「手に汗を振る」とか「額に汗する」といった表現は、精神的発汗です。それでは、人間は1日にどれぐらいの汗をかいているのでしょうか。
真夏の暑い日なら、普通に生活していても、1升ビン1本くらいの発汗量があります。もしも、この暑い盛りに激しい運動でもすれば、4~10リットルにもなるでしょう
体温の上昇を汗の蒸発熱で下げるという、人間の体は「水冷式」とでも言えるでしょう。ところで、寝汗はどんな意味を持っているのでしょうか。
よく不健康の証のように言われますが、健康な子供だって、髪をびっしょりぬらして寝ていることがよくあります。確かに、結核や熱病にかかったときなど、ひどく寝汗をかくことが知られています。
最近世間を騒がせているエイズの症状のひとつにも「寝汗がひどい」があり、戟戦恐恐とする人もいるかも知れません。
特別な病気の場合を除いて、実は寝汗は睡眠と深い関係があるのです。汗の調節を行なっているのは、脳の視床下部にある発汗中枢ですが、この発汗中枢は、睡眠中にその興奮が高まって、発汗の指令を体に送ります。
また、換気のよくない場合や厚着も、寝汗の原因になります。小さな部屋で多くの人たちが睡眠しているときとか、暖房がきいた部屋で睡眠しているときなどです。
幼児や老人は厚着での寝汗をかく場合も多くみられます。「寝汗をかくから病気だ」と単純に考えないで、ひとまず「寝汗をかく現任はなにか」をチェックが必要です。